「子ども自身が考える」場のヒント②
…大人どうしの連携

  • 2025.05.10
  • SRU

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「子ども自身が考える」場のヒント②
…大人どうしの連携

 

初めての「全国」につながった、
子どもがのびのびプレーできる環境づくり

[しながわバンブーミニ2024・コーチング インタビュー/②(全3回)

 

INTERVIEW(上写真・左から)

三矢洋介[しながわバンブーRC代表者(兼 高学年HC)]
小西良介[高学年コーチ/トレーナー(同左)]
福岡大輔[高学年HC(5年生コーチ)]
※肩書のカッコ内は2024年度のもの/HC=ヘッドコーチ

 

創立は2001年と、まだ歴史が長いとは言えないクラブ。しながわバンブーラグビークラブ(ミニラグビー=小学生の部)は、2024年度に初めて全国大会に出場しました。そもそも、「強豪」になることを命題に掲げていないチーム。フィールドにあるのは「子どもたち自身が決める」空気でした。2024年のコーチ陣に、年度を通じた取り組みについて話を聞きました。

 

大人がしゃべる時間を短く。プレーする時間を長く

 

――子ども自身が、チームランに近いことまで担うと伺いました。サインは自分たちで作って、試合中に使うか決める。ポジションも試合中に変えてしまう…と(笑)。そこまで判断ができるまでには、相応の実戦経験が必要ですね。やはり小さい頃からやっていないと…

 

三矢 個々の判断力の差はあると思います。が、経験の浅い子も思い切ってやってくれれば、それは周りがサポートする。

 

小西 入ったばかりの子がトライできるように、みんなで繋いで…というシーンもありましたね。

 

福岡 確かに試合数は、昨年は多かったかもしれません。その前の年が強かったから、練習試合の打診をたくさんいただいたんですよね。

 

三矢 「遠征は月に2回まで」と決めていたんですが、それを越えてしまう月もありました。その分、ほかの月で中止があったりして、なんとか全体では月2回には収まったけれど、少し多かったかもしれません。

 

福岡 遠征は、あんまり重なるとお家の負担が大きくなりますよね。私は、それほど感じませんでしたが。気を付けないといけないですね。

 

三矢 いつもお世話になっている東京ガスの大森グラウンドで改修工事があった。それで、よそのグラウンドへお邪魔していたという事情もありました。

 

小西 年度初めのミーティングでは「子ども自身がプレーする時間を長く」…という話もありました。大人が子どもたちに対してしゃべっている時間を、なるべく少なく。

 

福岡 話は短く! ですね。それと、メニューごとの指導は、三矢さんから、ほかのコーチに振っていましたね。良くも悪くも(笑)

 

――ひとつずつお聞かせください。まず、大人の話は短く、について。

 

三矢 シンプルにですね、大人が話しても、子どもは聞いていないです、ふつうは。練習の説明も最小限で抑えて、あとは「やって覚えて」もらう。少し余白を残すくらいでいいと。ただ、練習の意図については、大人同士はふだんから話しています。それが、プレーしている側に自然に伝わればベストだし、伝わるようなメニューにしたいとは思います。

 

福岡 言って聞かせるよりも、やって覚える。これもコーチには共通理解があったと思います。ドリルの順番待ちで並んでいる時間も短く。頭も体も、動いている時間を増やす。

 

小西 並んでる時間が長いと、ふざけたり、遊んだりしてしまいますよね。同じように、大人は、分かっていてもメニュー中にいろいろ喋りたくなっちゃう。自分で止めるのは難しいと思う。そのあたりはお互いに声掛けあって。「**さん、長いっす」って(笑)

 

みんなが支える。大人の当事者意識を広げる

 

――三矢さんが、メニューの仕切りのコーチングを周りに振ったのは?

 

三矢 年間を通じて、コーチによって偏りがあるのはよくないなーと。大きな方向性が示せたら、プロセスについてはいろんな視点があった方がいい。

 

――ひとつ前の指導体制では、銅冶(大輔)さんがすべてやってくれていたと、他のコーチの方から聞きました。

 

小西 メニューの中身までしっかり組み立てて、回してくれていました。コーチからも保護者からも信頼があった。

 

――個人的には、その時のクラブには、その選択が必要だったんだろうと感じます。銅冶さんご自身も長いスパンでコーチングの流れを見る中で、覚悟があった。リーダーに周りがついていくカタチになった。彼だからできた。

 

三矢 僕には、その力はないですね。

 

福岡 リーダーシップには、それぞれスタイルもありますよね。とにかく、銅冶さんは子どもに慕われるお人柄。子どもにいじられる余裕があった。周囲へのリスペクトも。

 

――2024年のチームは、それも基盤になっているんですね。いきなりジャンプしたわけじゃない。三矢さん、「仕切り」を複数のコーチに振るのにはデメリットもありますね。

 

三矢 子どもから見て「コーチによって言うことが違う」問題ですよね。「多少は、それもいいかな」と思ってました(笑)。みんなで取り組むメリットの方が大きい。

 

――結果的に子どもが迷ってしまうことは?

 

福岡 5年生コーチ(当時)から見て、それはなかったと思います。

 

小西 そもそも、そこまで細かいことを伝えていないですね。あとは、子どもの側が、プレーについて「自分たちが決めている」意識が強かった。言われた通りに動く感じが元々なかったので。

 

福岡 メニューを託されたほうの大人自身も、誰かをサポートする時とはまた違った努力、感じ方をしますよね。仕切り役をやると、矢印が自分に向く面もある。「子どもたちが、こんなプレーができるようになった」「きょうは、うまく伝えられなかった」と、自分ごととして感じる。

 

小西 練習中に大人がしゃべる時間はないから、グラウンド外では、結構発散もしてましたよね。試合のプレーについての「あーでもない、こーでもない」は、そういう時に大人どうしで…。

 

――ほかのコーチの方の印象では、大人どうしもよくコミュニケーションが取れている、と。特にグラウンド外で(笑)。夏合宿は、大人たちにとってもいい機会になっていたと聞きました。

 

小西 大人どうしがある程度仲良くなっているから、お互い言いやすい雰囲気はある。あとは、保育園や学校のように「子どもを預ける」って感覚の保護者は少ないですね。

 

三矢 コロナの期間に親の送り迎えが必要になって、当時のコーチ陣が工夫されて実になったと思います。練習中も会場にいられる人は、出欠のチェックとか、消毒とか、やるべきことがたくさんあるから手伝ってほしいと。ラグビー経験がない保護者にも練習を支えてもらうのが自然になった。

 

小西 卒業した6年の代は、子どもに託す部分が大きかった分、「メンタル次第」なところはありましたね。いい時はすごくいい。メンタルが落ちてる時はまったく…。試合だと、それがケガにもつながるので気を付けていました。まだ予定があるのに「もう(試合は)やりたくない」ってなった時も。

 

福岡 あの時は三矢さん、珍しく怒っていました。

 

三矢 すません。試合は相手もいることなので。

 

小西 伝えてくれてよかったですよ。

 

福岡 先ほどの「NOと言わない」声かけ(大人からプレーヤーへ)についてもそうなのですが、大人同士こそね、ダメなことはダメ、って伝え合わないといけない。言いづらいことでも、なあなあにしていると、全体の空気がそちらに流れる。どんなにりっぱな理念でも、文字だけのものになってしまう。

 

強い言葉も長い話も、そもそも愛情や熱意がないと、出てこないと思うんです。皆さん時間を割いて、一生懸命やっている。だからこそ、その方向をすり合わせていくのは、大人の役目だろうと。

 

(③につづく/全3回)

テキスト①はこちら

 

 

小西良介さん(高学年コーチ/トレーナー)。現在は國學院久我山高校でプレーするご長男はじめ、3人のきょうだいがバンブー育ち。奥様とともに長くバンブーの活動を支えている

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