「子ども自身が考える」場のヒント①
…プレーヤーがチャレンジを楽しめること

  • 2025.05.01
  • SRU

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「子ども自身が考える」場のヒント①
…プレーヤーがチャレンジを楽しめること

 

初めての「全国」につながった、
子どもがのびのびプレーできる環境づくり

[しながわバンブーミニ2024・コーチング インタビュー]

 

INTERVIEW(上写真・左から)

三矢洋介[しながわバンブーRC代表者(兼 高学年HC)]
小西良介[高学年コーチ/トレーナー(同左)]
福岡大輔[高学年HC(5年生コーチ)]
※肩書のカッコ内は2024年度のもの/HC=ヘッドコーチ

 

2024年度ヒーローズカップで初めて全国大会出場を果たした しながわバンブーラグビークラブ(ミニラグビー=小学生の部)。強豪とされるチームが敗れる中、関東大会を突破して、全国から16クラブが集う場に足を踏み入れました。

 

創立は2001年と、まだ歴史が長いとは言えないクラブ。そもそも、強くあることを命題に掲げていません。子どもたち自身が、卒業していく先輩たちをみて「ヒーローズ(全国につながる関東大会)に出たい」と希望しエントリーした2024年。初の全国行きを決めた代は、異色のチームでした。

 

大人たちが苦笑いで振り返っていわく

 

「練習してきたサインプレーを、試合で(子どもたちが)使ってくれない」
「試合中に、ポジションを自分たちで変えてしまう」
「共同キャプテンの二人が、練習中に揉めている」(?)

 

タッチラインの中にあるのは「子どもたち自身が決める」空気だったといいます。

 

数年にいちど出現するようなスーパーな中心選手が仕切ったわけでなく、大きな体格の子がそろったのでもない。在籍人数は6年生14人、5年生14人と特別な大所帯でもない。1チーム9人ルールのミニラグビーで、5年生たちも出場経験を積みました。2024年のバンブーたちは、試合を、練習を楽しんで、全国の舞台では存分に緊張もして、大会後も年度末まで走り切りました。

 

どの年代のどんなチームでも、指導者ならきっと理想に掲げるのが「プレーヤー自身が考える」チームづくりでしょう。その、ヒントとして。2024年のしながわバンブーミニ(幼児・小学生チーム)のコーチ陣に、年度を通した取り組みについて聞きました。

 

そこには、歴代のコーチたちへの敬意と、プレーヤー中心の理念、そして放任とも一線を画す「大人がすべきこと」への思いがありました。

 

子どもたちのチャレンジに「NO」と言わないと決めた

 

――全国大会の出場、おめでとうございました(聞き手はクラブ創立者。全国大会を目指す大会への出場には反対の意見を持つ)。子どもたちが望んで達成したことは、率直に素晴らしいことだと思います。

 

お三方は、お子さんがきょうだいでバンブーに加わってくれて、ご家族で長くクラブをサポートしてこられた皆さんです。バンブーが全国大会につながる大会にエントリーする前からチームを知っている保護者で、昨年は中心となって高学年の子たちの成長を見てきたコーチでもあります。

 

お話をうかがいたい、と思ったのは、バンブーがSRUの加盟チームだから、ではありません。これまで30年ほど全国のラグビースクールを見てきましたが、2024年度のバンブーのありようが興味深かったからです。

 

いわゆる勝利志向の指導とは真逆。子どもたちの雰囲気も、いい意味で子どもらしさがある。その中で、彼ら彼女らの目標を叶えることができたのが、面白いと感じたからです。

 

高学年のコーチングをまとめたヘッドコーチとして。三矢さん、どんな方針で指導に当たっえきたのでしょう。

 

三矢 いえ、それほど大げさな感じでなくて…。基本的には僕だけじゃなく、実際のメニュー指導は、皆さんにお任せしていました。ただ、年度の初めに「これだけは」と考えていたのは、子どもの選択に対して、大人がNOと言わないこと、ですね。子ども自身がチャレンジしたいということに対して、大人が「それはない」と初めから道を断ってしまうのは違うかな、と。ヒーローズ(全国大会につながる関東大会)へのエントリーもその流れです。

 

土台には、これまで指導に関わってきたコーチや保護者の皆さんが、みんなで取り組んでこられた土台があると思います。いっぺんに全部はできないし。1年1年、ですよね。

 

――子の意思を尊重する、って、実践は簡単じゃないですものね。

 

小西 うちは長男がバンブーでお世話になって、いま高校1年になりました。去年は長女が、三矢さんのお子さんと一緒に共同キャプテンもさせてもらって、長くチームを見てきていますけれど…。

 

正直、クラブに入ったばかりの頃は「これで大丈夫かな」って感じていたこともあります。

人数が今よりずっと少なかったこともあって、子どもがすることに何でも「いいよ、いいよ」で接しているように見えた。それでは全体がまとまらないし、練習がだらっとしてしまう。

「スポーツ以前に人として」、という面を、伝えなくちゃいけないんじゃないかと感じることもあった。ラグビーでは特に、そこは大事。ただ、自分が言うことでへんな緊張感が生まれても悪いし…。

 

伝えるべきを伝えることと、のびのびプレーできる空気づくり、そのバランスって難しい。

 

子どもを委縮させてしまうと、発想をしなくなる

 

福岡 うちは中学までバンブーでお世話になった長男が、今年、高校1年です。三矢さんのところのお兄ちゃんもいま高3で、小山台高校に練習に行くと姿が見られる。みんながラグビーを続けてくれているのを感じられる環境は、本当にありがたいし、うれしいなって思っています。

 

私は、去年は高学年の中で、5年生担当コーチとして携わってきました。高学年の指導は6年生のコーチが仕切ることが多かったのですが、子どもを委縮させてしまうような、嫌な雰囲気になることがほとんどなかった。これは重要なところだと思います。

 

――子が、「怒られるかもしれない」「よけいなことをするのはやめておこう」と考えるような場では、プレーヤーが自ら考えることは難しい。それ以前に、「やってみよう」と思えないですね。

 

小西 子どもたち自身が、グラウンドでは自分たちが決めている、自分たちがやっているという感覚が強かったんだろうと思います。

 

――確かに、良くも悪くも(笑)、大人への忖度を感じない子たちですね。

 

三矢 キャプテンも、自分たちで決めてもらいました。

 

小西 試合中のプレー選択もそうだし、ポジションも基本は希望制。「君は体格がこうだから、どこどこに」とか、大人が決めてしまうことはなかった。

 

福岡 三矢さんが年度頭に「子どものチャレンジにNOと言わない」の話をしたのは、コーチだけではなくて、保護者の皆さんにもしっかり残っていると思います。子どもに対して「それはやるな」とはもちろん言わない。子どものやったことに対して、あとから「なにやってんだよ(怒)」といった類の言葉かけをしない。

 

――心理的に、「プレーヤー自身が発想して、行動に示す」ことへの安心感があったんですね。心がちぢこまっていると、リーダー的な選手でさえ、判断をしなくなる。子どもはある面で鋭いから、「閉じる」のはあっという間ですよね。

 

三矢 サインプレーは自分たち(プレーヤー)で考えてやっていました。試合前の、流れの確認の練習でも、リスタートの位置は自分たちで決めてもらっていた。やりたい地域、やりたいサインがあるみたいだったので。

 

――もうそれは、練習運営の範疇ですね。大人の側が、よくそこまでガマンできましたね。

 

三矢 いえ、シンプルに、彼ら言うこと聞いてくれないんです! 大人は大人なりに、相手チームの特長を考えたりして、いろいろ提案もしてきたんですけど…。彼ら自身が用意したサインプレーも、いざ試合となると使わなかったり。関東大会では、大人から、あるサインプレーを一つだけ、「これだけは準備をして、ぜひ使って」とお願いして。それは使っていましたね。

 

(②につづく/全3回)


三矢洋介さん(下写真・左/しながわバンブーRC代表者/2024年度高学年HC)。現在は小山台高校で主将を務めるご長男ら二兄弟ともバンブー育ち。2023年度から代表者を務め、クラブの運営、指導に新風を吹き込んでいる

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